書籍紹介
森のスケーターヤマネ(文研出版)

ヤマネは体重18グラム程度の森の木の上で暮らしている。枝や葉の裏を滑るように移動する「森のスケーター」だ。510万年前から日本にすむ列島最古参で、天然記念物でもある貴重な生きものである。
そのヤマネを著者は学生時代から追いかけてきた。和歌山の熊野の森では教え子の小学生たちと一緒に野外研究をしたり、飼育下で育てて赤ちゃんの成長の様子などを観察し、「ヤマネ語」を解明した。そして、八ヶ岳山麓の森でヤマネの生態調査し、多様な分野の専門家とも協力しながら科学的研究を続けてきた。
こんな貴重な科学研究の成果を、子どもたちにも親しみやすいように、写真、絵、図とともに物語調で紹介したのがこの本。ヤマネのチッチの1年を通じて、冬眠、体のつくりや鳴き声の意味、なわばり、交尾・巣づくり・子育て、天敵からの生き残り、えさ探しなどを紹介している。自然の中で精いっぱい生きるヤマネの姿を通じて、いのちの素晴らしさと大切さを感じさせてくれる優れた科学の読み物。小学校4年生以上が対象。課題図書に選定された。